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病院医療と在宅医療の違い


在宅医療の特徴は、日本人にとってなじみの深い「病院の医療」と比べてみるとよくわかります。

病院の医療というのは、一言でいうと「治す医療」です。
例えば、「転んで骨折をしてしまった」「インフルエンザや肺炎などの感染症にかかり、高熱で苦しんでいる」「脳卒中などで急に倒れ、意識を失ってしまった」……。
こういうときは病院の「治す医療」が頼りになります。高度な検査機器や医療設備があり、医師や看護師などの専門職のスタッフが常駐していて、集中的な治療が受けられるからです。
その半面、病院では効率的な医療が何より優先されるため、治療を受ける患者さんは、我慢や不自由を強いられることが多々あります。無味乾燥な病室で、安静にしているだけの入院生活を続けるうちに、認知症を発症してしまう高齢者も少なくありません。
また、退院後は外来でのフォローになりますが、主治医が患者さんに接するのは月1 回などの定期健診だけで、しかも〝3 分診療〟といわれるような、わずかな時間に限られます。
そのため、患者さんが自宅で薬を飲めていないのに、薬の効果が出ていないと勘違いした主治医が処方薬を増量してしまう、といった誤解も生まれやすくなります。

それに対して、在宅医療は「支える医療」といえます。
在宅医療では、患者さんの自宅を医師や看護師が訪れるため、患者さんは病院にいるときに比べ、とてもリラックスした状態で診療を受けられます。認知症の始まった患者さんも、住み慣れた自宅で療養していると進行を抑えられることがよくあります。

また、医療者が患者さんの介護をするご家族と直接話ができ、食事や服薬などの生活の様子を把握することもできます。
高齢者が薬を飲み忘れることが多いのであれば、薬の種類や服薬の回数を見直す、といったきめ細かいサポートができるのも、在宅医療の利点です。
医療の内容も、どういう治療を受けたいかという患者さんの希望に沿って方針を決めます。
急性期を過ぎた患者さんの療養生活全般を支えること。それが在宅医療の〝得意分野〟だということです。

病院医療と在宅医療は、どちらかが優れていてどちらかが劣っているというものではなく、二者択一で考えなければならないものでもありません。それぞれの〝得意・不得意〟を理解して、使い分ければいいのです。
特に、高齢者や心臓疾患、脳卒中、がんなどの大きな病気を経験した人とその家族では、在宅医療という選択肢を知っているといないとで、その後の人生のQOL が大きく左右されます。