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【報告】多職種連携イベント開催しました!


2025年1月29日、18:30より静岡コンベンションアーツセンター・グランシップにて当クリニック主催の多職種イベント「2025年問題と共に進む持続可能な多職種連携のあり方」を開催しました。

はじめに

当法人顧問・望月より、介護保険制度施行から25年が経過し、現場における多職種の連携の重要性がますます高まっていることが語られました。また、少子高齢化が進む中で、かつての在宅医療の姿を振り返りながら、今後の多職種連携のあり方について皆で模索し、継続的な議論を深めていくことの大切さが強調されました。

第1部:パネルディスカッション

本パネルディスカッションでは、「多職種連携の現状と課題、そして未来へ」をテーマに多職種連携を取り巻く現状、課題、そして未来に向けた展望について、各分野で活躍する専門家がそれぞれの視点から議論を展開しました。
〇山田 実 先生(静岡済生会総合病院 副院長)

近年の医療では、単に病気を治療するだけでなく、患者さんの生活の質(QOL)を維持し、可能な限り入院前と同じ状態で退院できることが求められています。そのため、当院では数年前から、すべての診療科において毎週一回、多職種連携のカンファレンスを実施しています。
カンファレンスでは、患者さんの食形態の見直しや、入院中のADL(生活動作)の変化に応じたリハビリ計画の調整など、多職種の視点から意見を出し合い、最適なケアを提供できるよう努めています。薬剤部からは嚥下機能に関する提案が出されることもあり、医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師などが連携しながら対応を進めています。

また、できる限り早期からリハビリを開始することで、入院による身体機能の低下を防ぎ、退院後の生活がより良いものとなるよう支援しています。当院では、病気の治療にとどまらず、患者さんが自分らしい生活を続けられるよう、多職種連携を積極的に推進し、より質の高い医療の提供を目指しています。

山田 実 先生(一番右)

〇小嶋 隆三 先生(小嶋デンタルクリニック 理事長)

退院後、ご自宅でリハビリを開始する中で、ご家族から「もう一度口から食べられるようになりたい」という希望が寄せられることが多くあります。しかし、嚥下機能の評価を行うタイミングについては、医療側とご家族の意見が異なる場合もあります。

医科の立場では「まだ経管栄養が必要」と判断することがある一方、ご家族は「できるだけ早く経口摂取を再開したい」と希望されるケースが少なくありません。そのため、嚥下機能評価の適切なタイミングを見極め、医科と歯科がより密接に連携することが重要だと考えています。今後も、患者さん一人ひとりに最適なケアを提供できるよう、多職種間の協力をさらに強化していきます。

小嶋 隆三 先生(中央)

〇星 ともこ 先生(訪問看護ステーションなのはな 管理者)

多職種連携において、情報共有は非常に重要な役割を果たします。
特に、ケアマネジャーの存在によって、私たちは短期間しか関わらない患者さんであっても、その方の生活歴や希望を知ることができ、それを踏まえたケアを提供することが可能になります。
例えば、「自宅で療養したい」「庭を眺めたい」といった患者さんの想いを共有することで、限られた時間の中でも寄り添った支援ができるようになります。

先日、認知症の患者さんのケースでは、入院中に点滴で栄養を管理していましたが、退院後の対応について家族の意向と医療の判断が交差しました。痰の吸引の負担も大きく、家族の不安も強い状況でしたが、訪問診療の先生と家族の信頼関係があったことで、点滴を続けるかどうかを慎重に検討することができました。
訪問看護師としては、先生の説明をかみ砕いて伝え、家族の決断を支える役割を果たしました。結果的に、家族は「痰の量を見ながら判断する」という柔軟な選択をすることができ、在宅療養の時間を穏やかに過ごすことができました。このように、病院・在宅・多職種間での十分な情報共有があることで、患者さんや家族にとってより良い意思決定のサポートが可能になります。

情報共有の手段としては、現在 メディカルケアステーション(MCS) を活用しています。医師・訪問看護・ケアマネジャー・ヘルパーがリアルタイムで情報を記録・閲覧し、サインを交わすことで、より密接な連携が可能となっています。特にヘルパーの方々にとっても、自身の支援がチームの一員として評価されることで、やりがいにつながっているようです。MCSへの記録は慎重な言葉選びが求められますが、その積み重ねがチームの一体感を生み、より円滑な連携へとつながっています。
多職種連携をより充実させるために、今後も効果的な情報共有の方法を模索しながら、患者さんとご家族の希望に寄り添った支援を続けていきます。

星 ともこ 先生(中央)

〇井出 智子 先生(静岡市社会福祉協議会ケアマネジメントセンター エン・フレンテ 所長)

ケアマネジャーの仕事は、まさに多職種連携そのものであり、ケアプランの作成を通じて医療・介護・福祉の各職種と協力しながら支援を行っています。
情報共有のツールとしてメディカルケアステーション(MCS)を活用することで、リアルタイムな情報共有が可能となり、特に在宅での看取り期など、スピードが求められる場面で大きな助けとなっています。
ただし、MCS以外のツールではタイムリーな連携が難しい場合もあり、今後はより効率的な情報共有の仕組みを構築していくことが重要だと感じています。

また、病院との連携に関しても課題があります。
済生会病院のように、入院時からケアマネジャーと積極的に情報共有を行い、病棟でのカンファレンスにも参加できる体制が整っているケースは理想的です。しかし、すべての病院で同様の対応が取られているわけではなく、退院時に初めて関わる場合など、情報収集が十分にできないケースも少なくありません。
退院後のサービス提供の質を高めるためには、病棟の看護師や相談員とのより密接な連携が求められますが、病院側の業務負担も大きいため、情報共有の仕組みをさらに工夫していく必要があります。

介護保険制度施行から25年が経過し、利用者の意識やニーズが大きく変化していることを実感しています。かつては「支援を受けられること自体がありがたい」という考えが一般的でしたが、現在は「対価を支払ってサービスを受ける」という権利意識が強まり、利用者の要求も多様化しています。その結果、サービスに対する期待値の上昇や、時には苦情が増加する傾向も見られます。

また、高齢者の住まい方も多様化しており、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、新しい選択肢が増えています。これに伴い、サービス内容や提供の在り方も変化しており、利用者の経済状況によって選択肢が異なるなど、より複雑な調整が必要になっています。

ケアマネジャーとして、利用者やご家族から「どのサービスを選べばよいか」「どの医療機関にかかればよいか」といった相談を受けることは日常的です。従来の経験則に基づいて提案を行うことが多いですが、次々と新しいサービスが生まれる中で、知識を常にアップデートし、最適な提案ができるよう努める必要があると感じています。今後も、多職種連携を強化しながら、より良いケアの提供を目指していきます。

井出 智子 先生(一番右)

〇内田 貞輔(医療法人社団 貞栄会 理事長)
近年、訪問診療に従事する医師の数は増加しています。これは、コロナ禍を経て在宅医療の重要性が高まったことや、キャリアの選択肢として訪問診療を選ぶ医師が増えていることが背景にあります。しかし、訪問診療が広がる中で、在宅医療に求められるスキルや経験と、新たに訪問診療に携わる医師との間にギャップが生じる場面も見られます。

特に終末期医療の分野では、病院で提供されていた医療が在宅へとシフトし、医療依存度の高い患者さんを支える役割がより大きくなっています。以前は病院の医師が担っていた「治療方針の決定」や「患者・家族との意思決定支援」も、訪問診療の現場で対応する機会が増えています。病院の平均在院日数が短縮され、迅速な在宅移行が求められる中で、十分な情報共有が難しい場合もあり、円滑な連携の重要性が一層高まっています。

また、近年は若手医師や看護師が在宅医療に携わる機会が増えていますが、訪問診療ならではの経験を積む機会が不足しがちであり、在宅での医療・ケアの在り方を学ぶ機会の充実が求められています。終末期の患者さんやご家族との関わりでは、医療的な判断だけでなく、心のケアや意思決定のサポートが重要になります。訪問診療の場が「経験を積み、成長できる環境」として機能することで、より質の高い医療提供が可能になると考えられます。

情報共有の観点では、メディカルケアステーション(MCS)などのデジタルツールが活用されています。リアルタイムでの情報共有が進む一方で、対面でのコミュニケーションの重要性も改めて認識されています。特に病院から在宅への移行時には、医療者同士の直接のやり取りや、患者・家族との対面での説明が重要であり、デジタルツールと対面のバランスをとりながら、スムーズな情報共有を進めることが求められます。

さらに、訪問診療の普及に伴い、患者さんやご家族の意識も変化しています。在宅での療養に対する考え方や、医療機関との関わり方が多様化する中で、患者・家族の意思決定をサポートする体制の強化が今後さらに重要になります。また、静岡県内における訪問診療の医師の数は依然として十分とはいえず、より多くの医師が在宅医療に参入しやすい環境を整えることも課題の一つです。

訪問診療の役割がますます重要になる中で、DX化の推進と、対面でのコミュニケーションのバランスを適切に保つことが、今後の在宅医療の質を維持・向上させる鍵となります。これからも、医療者同士が協力し合いながら、患者さんやご家族にとって最適な医療・ケアを提供できる体制を構築していくことが求められています。

当法人理事長・内田(一番右)

それぞれの視点から、現状の課題や解決策が明確に示され、多職種連携の未来に向けた可能性と方向性が議論されました。
※静岡ホームクリニック院長・松本 拓也先生が登壇する予定でしたが、所用により欠席となりました。

第2部:座談会

パネルディスカッション後、参加者同士での座談会を実施いたしました、
職種を超えた意見交換を通じて、現場でのリアルな課題や解決策を話し合いました。
【共有された主な意見】

・情報共有のハードル
タイムリーな連携の難しさが、業務効率や患者支援に影響を与えている。
・行政、国への働きかけ
多職種連携を強化するためには、制度の整備が不可欠である。
・人材育成の重要性
どの職場でも共通の課題として、人材の確保と育成が求められている。
・それぞれの役割を果たすために
自己犠牲を厭わない姿勢。福祉は「愛」に溢れている。

座談会の様子

今後の展望

今回のパネルディスカッションや座談会を通じて、多職種連携の重要性が改めて確認されました。
また、参加者から寄せられた現場の声や具体的な取り組みの事例は、今後の地域包括ケアの実践に向けた貴重なヒントとなることを強調しました。
本イベントにご参加いただいた皆様、そしてご協力いただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
今後もこのようなイベントやセミナーの開催を検討しておりますので、またぜひ参加していただければと思います!

主催・運営

主催:医療法人社団 貞栄会 静岡ホームクリニック
司会・ファシリテーター:診察部副部長 大須賀
ファシリテーター:顧問 望月
運営補助:広報 奥山、地域連携室 ほか

イベントの全貌をYouTubeで公開!

冒頭の内田の挨拶から5名のパネリストによる活発な議論展開、そして座談会~グループ発表の様子まで、余すことなくお届けする動画をYouTubeで公開いたしました。多職種連携の課題や解決策が具体的な事例とともに共有された貴重な内容です。ぜひご覧ください!
★動画はこちらから★(前後編に分かれています)

【前編】静岡ホームクリニック主催・多職種連携イベント「2025年問題と共に進む持続可能な多職種連携のあり方」
・趣旨説明
・顧問望月挨拶
・登壇者紹介
・パネルディスカッション①(テーマ:多職種連携の現状・課題・未来)

【後編】静岡ホームクリニック主催・多職種連携イベント「2025年問題と共に進む持続可能な多職種連携のあり方」(後日公開予定)